本章では、日系企業に勤務している国有企業経験者に対するインタビュー調査の結果に基づいて、国有企業経験者が「使える人材」として、国有企業で得た職務経験、能力を具体的に日系企業でどのように活かしているのかを、キャリア形成の実態を手掛かりにして明らかにする。この課題をめぐって、まず第1節において、調査の概要と被面接者の特徴を説明する。第2節では、被面接者の国有企業でのキャリア形成の実態を吟味して、その特徴を明らかにする。ついで第3節では被面接者の日系企業でのキャリア形成と国有企業経験との関わりを検討する。第4節では、日系企業への適応という視角からキャリア形成の中での国有企業経験の役割を考察する。最後に第6章の全体をまとめる。