多文化家庭とは、「違う国籍·人種·文化をもった男女が築いた家庭、または、そのような人々が含まれた家庭のこと」を言うが、多文化家庭は韓国社会が多文化共生のきっかけをつくり、多文化社会となるためにその一端を担っている。しかし、同時に異文化に対する差別や偏見も多く見られる。その理由は、韓国社会が多文化社会という概念が出てきてまだ歴史が浅いのも原因の一つである。多文化家庭の当事者にとっては言葉は韓国の文化を理解し、韓国で生活するために「言葉」が果たす役割は非常に大きい。特に韓国語を母語とする多文化家庭の子どもたちにとっての「言葉」の役割は人格形成にとって大切なものである。
在日朝鮮人文学の作家金石範と「ことば」、李良枝の『由熙』を通して、アイデンティティの形成について考察してきた。その中でも特に「言葉」の問題に注目したが、言葉によって自身のアイデンティティを確立するために大きな役割を果たすことが分かった。言葉を取り巻く環境は、歴史や民族性だけではなく、国や国籍、帰化問題など、それらがあい交わってアイデンティティの確立に結びついている。